INTERVIEW 07 「家業を継ぐ」子どもが気軽に立ち寄れる。地元の美味しいお肉屋さんを目指して

石川 佳男さん 布土精肉店 店主

美浜町布土地区にある精肉店。無添加の加工食品や贈答品など、新たな商品開発も積極的に行っています。牧場にも足を運び、成育の過程や飼料の確認を行いながら、安心安全で美味しいお肉を届けてくれます。

20代の頃は他で仕事をしていて、お盆で実家に帰省したときに、父が自分でつくった焼き豚を焼いていて、たまたまそれを食べたときに、「あれ、どうしてこんなにおいしいのだろう。」と思ったことがきっかけです。昔はそれほどおいしいと思わなかったのに、大人になっていろいろなものを食べてきて、こんなにおいしいものがあったのかと思いました。「父さんが朝焼いたの、へえ」って。それから、うまい肉をもっとたくさんの人に届けたいという思いが湧いてきました。父からは、仕入れや材料など、おいしいものを造るためのヒントを得ました。

それでいざ、自分も家業を手伝おうと思ったのですが、親戚や友達、周りの人みんなに反対された。「今は自営業が衰退している。美浜町や南知多町は、人口がどんどん流出してしまい、このようなところで二代目継いで、潰れたときの再就職はどうする?」などと、厳しいことを言われました。

しかし自分は、父の焼き豚を食べたことがヒントで、「美味しいものはどこにあっても絶対に食べに来てくれるし、買いに来てくれる」という一つの信念がうまれていて。

そっちが勝ってしまい、どうしても家を継ぎたいと、翌年に会社を辞めて「自分の家を継ぐ、絶対に継ぎたい、将来において頑張っていくから」と、周りを強引に説得する形で、家業を継ぎ始めました。

  • 石川 佳男さんインタビューの様子
  • 布土精肉店外観
  • 布土精肉店の安心安全で美味しいお肉

新しい商品開発

当時、お店に活気が足りないと感じていて、それはなぜだろうと考えていたら、子どもが来ていないからでないかと思いました。子どもと一緒にお母さんも来てくれるという直感もありました。だったら、子どもたちが喜ぶように駄菓子でも置けばいいのかと考えて、棚まで作って置いてしまおうかと思ったこともありました。

ある日、二人の小さな兄弟が来たのですが、お兄ちゃんと弟は、駄菓子がないから揚げ物でも買いたいけれど、駄菓子を買うくらいのお小遣いしか持っていない。

その当時うちのコロッケは1個50円で、1枚を半分に分けるしかない。でも少し違うなと思いました。1個10円なら弟と2、3個買って分けられると思い、そこで考えたのが駄菓子みたいに1個10円でたくさん買えるお惣菜、しかもそれがいろいろ選べる楽しさがあってもいいのではないかと思って、1個10円のからあげを開発。その後も1個10円しゅうまい、1個10円ハムカツという商品をどんどん開発していきました。

  • 布土精肉店店内の様子
  • 子どもが商品を買う様子
  • 布土精肉店のからあげ、しゅうまい、ハムカツ

知多牛ハンバーグ「響」

知多牛ハンバーグは、小学生にもらったアイディアが元で作られたハンバーグです。小学校の先生から地元で商売をやっている人たちの声が聞きたいということで、学校で話をしたのですが、そのときのお礼に子どもたちが商品のアイデアを出してくるということになりました。小学生ならではの発想で、「みかんハンバーグ」など、個性的なアイデアをいくつか考えてくれた中で、お店のある布土地区の名前の由来となった「磨き砂」をモチーフにした、磨き砂ハンバーグというのがあり、磨き砂のように白いゴマをふったハンバーグを作ろうということになりました。

まず最初にハンバーグを作って白いゴマをふって焼いたのですが、それはあまり美味しくはなかった。だけど磨き砂は白いからどうやって白さを表現しようか考えたときに、あみ油をまいて白くした上に軽くゴマをふればと思いつきました。それを焼いて食べてみたら、あみ油によってふっくらとしたジューシーなハンバーグになるということが分かり、店舗で販売を開始したところ大ヒット商品になりました。その売り上げから、今度は自分が子どもたちに恩返し(学校へ遊具の寄付)をすることができました。

  • 知多牛ハンバーグを作る様子
  • 知多牛ハンバーグ
  • 学校へ遊具を寄付した時の集合写真

これからの目標

今後、開発に注力するものとしては、美浜町でSPFの豚。豚肉が生産されていくということで、他の豚と比べても環境のいいところで育てられた豚なので、今からの時代に合っている畜産ですし、これらを使って新しい看板商品を作りたいと思っています。

  • ハートの形をしたコロッケ

地域との繋がり

この町には豊かな自然がある。その自然をしっかりと守ってくれているのが農家の人たちだと思っています。

その農家の人たちに何か自分ができることはないかと思い、地元農家の方のために野菜販売ブースを設けました。自分ばかり助けてもらっているのではなく、みんなが少しずつ地域や人を思う気持ちで、助け合いによって、他の町に負けない町づくりをしていくことができたらと思っています。

  • 野菜販売ブース

mihama people

  • 01 「古民家で暮らすまで」 山本秀一さん
  • 02 「Uターンしてお店を開く」 仙石 修一さん
  • 03 「とる、たべる」 杉山直生さん 橋本千尋さん
  • 04 「雪山から美浜町へ」 鈴木敦由さん
  • 05 「子育てママを支えたい」 天木麻子さん
  • 06 「のんびり子育て」 小林勝久さん 小林智子さん
  • 07 「家業を継ぐ」 石川 佳男さん
  • 08 「のんびり子育て」 小林勝久さん 小林智子さん
  • 09 「大人がワクワクする農園」 大崎 秀樹さん
  • 10 「スポーツでつながる」 森川 美保さん 丹内 心悟さん
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