INTERVIEW 09 「大人がワクワクする農園」ちゃんと美味しい、ちょっと楽しい。

大崎 秀樹さん

ちたフルーツビレッジでは、115アール(約3500坪)の温室を利用してグレープフルーツ等を栽培しています。自家製の堆肥を使い、土壌にもこだわ理、果物の販売だけではなく、企業や個人の方向けの収穫体験や果樹の「オーナー制度」も始めました。

 知多半島道路を下り、美浜ICを降りて少し走った所に私の農園があります。一本内側の通りなので外からは全く分からず、知る人ぞ知るという感じです。中に入ると小さなログハウスと無数の温室が立ち並び、はじめて来られるお客様には「広い!」と驚かれます。この温室の中では国産のグレープフルーツや国産のブラッドオレンジ、果実が500円玉くらいの大きさのブルーベリー、そしてちょっと珍しい所では国産バナナなど栽培しており、これらを生産販売だけでなく、自分の手で収穫する「果物狩り」や「オーナー制度」などを提供しています。グレープフルーツは輸入がほぼ100%なので、みんな実ってる様子を見たことがないはずです。グレープフルーツの実がたわわになっているその姿が葡萄の房みたいに見えるのですが、それで「グレープフルーツ」という名前で呼ばれるようになったと言われています。そんな様子を実際に見ていただき、果実を自分の手で採れたら楽しいだろうなって思って始めました。バナナも同じく、スーパーやコンビニでは、バラバラに切り離された状態で販売されていますが、実際に実っている様子は日本だと沖縄くらいでしか見ることができないと思います。沢山ある房を株ごと切り倒して持って帰ってもらいたい、東南アジアの現地に来てしまったような体験をしてもらいたいのです。なので、ちょっと珍しくて面白いモノを中心に、お子さんも楽しいけどそれ以上に大人の私たちも含めて「面白い!」と感じて頂ける大人がワクワクする農園というのをコンセプトにして取り組んでいます。また、最近は果物販売だけでなく、柑橘類20種食べ比べや自分で作る丸搾りジュースのような体験メニューもはじめました。丸搾りは皮を残して中身だけジュースにするという特殊なマシンを使っているので、写真映えしてお客さんにも好評です。

  • ブラッドオレンジ
  • みかんジュース
  • 農園の様子
  • 農園の様子

ここまでは苦労の連続?

 今は観光農園的なことをやっていますが、もともとは数年前まで美浜町特産のハウスみかん栽培農家でした。地域の中でも大規模にやっていたのですが、植え替えた苗木にウイルス病が入っていて、これが農薬かけても治らない、かつ土壌で広がるというとても厄介な病気でハウスみかんができなくなってしまったのです。それで植え替えを余儀なくされたのですが、その時に目を付けたのが、当時日本でほとんどだれもやっていなかったグレープフルーツ栽培でした。苗木を探して植付け、育てること4年ようやく実がついて食べてみると、慣れ親しんだグレープフルーツの味ではなくて、レモンより酸っぱい…。今でこそそれは「ダンカン」というグレープフルーツの原種に近い品種と分かるのですが、当時は苗木屋さんもそんなことは知らずに、ただ「グレープフルーツ苗」として販売してたのです。結局その時の品種はほとんど売り物になりませんでした。

 そんな中で、いろいろ苗木を買って試すうちにルビーとかピンクとかみんながよく食べるような品種も出てきてようやく一安心したのを覚えています。だんだん分かってきたこともあって、一番大きい温室にルビーを300本植えまして、4年たって収穫して試食してみると全然美味しくない。横の樹も、そのまた横の樹も…なんと300本全部違う品種だったみたいで、植え替えるとまた4年かかるし…とても悩みました。悪いことは重なるもので「グレープフルーツはウイルス病を保毒しても発症しない」と文献に書いてあったので、グレープフルーツを選んで植えたのですが、しっかり発症したのです。

 それでグレープフルーツがダメなら柑橘類は全部ダメだと、思い切ってそこからはじめたのがブルーベリーです。ブルーベリーは絶対にうつらないのですが、これまでの経緯で、怖くなってしまったのと新しいやり方を模索した結果、 水耕ポット栽培にしました。 最近のブルーベリーは葡萄のシャインマスカットみたいに強烈な品種が出てきてますね。全て最新品種で揃えて植えました。ただ、ブルーベリーも収穫できるようになって、実際に売るまで3年かかってしまうので、効率が悪く、販売まで時間がかかるものばかりだとこちらが飢え死にしてしまうので、「1年で出来るモノもやろう!」と考えて、はじめたのがバナナです。グレープフルーツの生産販売農家を目指してたのに観光農園をはじめたり「あいつは色々と手ばかり出して」と当時は周りからも言われましたが、今となっては農園で収穫できるフルーツのバラエティーも豊かになって、お客さんにも楽しい体験を提供できるようになったので結果オーライという感じです。

  • 農園の様子
  • 農園の様子
  • 農園の様子
  • 農園の様子
  • 農園の様子
  • 農園の様子

農園のこれから

 南知多エリアは、昔に比べるとちょっと元気ないと感じています。この辺りはやはり観光地なんですよね。大きな施設や観光スポットがひとつあったとして、そこに行って終わりではなくて、知多半島をドライブしながら色々な所をぐるっと周って帰るみたいな周遊型の特徴があると思います。うちの農園もその中の一つとしての役割を果たしていくというのが大事かなと思ってます。一個だけでは存在しえないし、それぞれの施設が滞在時間に応じた顧客満足を提供して、その中の選択肢で「ちょっとちたフルーツビレッジもよっていこうか…」というような感じになればと思っています。さらに美浜町も含めて知多半島に来たお客さんの満足が高くなって、「また来年も知多に行こうね。」というような良い循環に繋がるといいですね。

  • 大崎さん
  • 農園の様子

mihama people

  • 01 「古民家で暮らすまで」 山本秀一さん
  • 02 「Uターンしてお店を開く」 仙石 修一さん
  • 03 「とる、たべる」 杉山直生さん 橋本千尋さん
  • 04 「雪山から美浜町へ」 鈴木敦由さん
  • 05 「子育てママを支えたい」 天木麻子さん
  • 06 「のんびり子育て」 小林勝久さん 小林智子さん
  • 07 「家業を継ぐ」 石川 佳男さん
  • 08 「のんびり子育て」 小林勝久さん 小林智子さん
  • 09 「大人がワクワクする農園」 大崎 秀樹さん
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